①監督の映画作品を語る
②コミュニケーションを大切にする
③監督の演出を助ける
④演技のアイデアを出す
⑤プロの俳優としての意識を持つ
①「監督の映画作品を語る」
オーディションやパーティーなどで監督と話す機会がある場合、まず、した方が良いのはその監督の作品の話である。
作品の内容はさておき、一つでもいい所を見つけて誉める事が重要である。
監督にとって作品は子供のようなものなので、誉められると嬉しいわけである。
その監督の作品に出演しようとしているなら、その監督が作った映画を観ていないのはどうかと思う。よく私も「監督の作品に出演させてください」と言われることがあるが、その時には「僕が監督した映画、観た事がありますか?」って言う。具体的に作品の話をされるとそれだけでその俳優を気に入ってしまう事が多々ある。
「監督と何の話をしたらいいのかわからない」という俳優がいるが、映画監督と俳優の話す事は「映画」の話がいいに決まっている。政治や宗教の話は絶対ダメ。映画の話が一番の近道なのである。
俳優にとってキャスティング権のある監督やプロデューサーは営業先である。営業するのに相手の事も知らないで営業するのは確率が低くなって当たり前である。
②「コミュニケーションを大切にする」
前述したことに加えると話が上手な俳優はコミュニケーション能力に長けていると言える。しかし、その話し方が調子良すぎたり、誤解を招くような言動は控えた方が良い。要は、相手に楽しいと思わせる事が重要である。話が上手くない俳優はどうすればいいか。
時間を使うしかない。監督は現場だけではなくてワークショップや飲み会などの集まりでも出会うことが出来る。そう言う所に頻繁に参加して顔を覚えてもらうのもコミュニケーションの一端である。つまり、身近な俳優からキャスティングされやすいわけで、いつも監督の頭にその俳優が浮かんだ方が良いのである。コミュニケーションは俳優にとって非常に大切な事である。
「そんな事をしなくて、演技で勝ち取る」と思っている俳優がいると思うが、演技は上手くてもコミュニケーションが欠けている俳優は成功しない例の方が多いのである。
③「監督の演出を助ける」
これは、現場での話になるが監督が演出を迷っていたり、大人数が出ているシーンなどの時、演出を助けてくれる俳優は助かる。
自分から出しゃばって色々な演技をするのではなく、監督の意図している事を読みとって演技をしてくれる人が一番嬉しい。
特に、大人数が出ているシーンは一人一人に演出をつけるのが大変である。そんな時に、自らが理解して演技をしてくれる俳優は助けになるので使いたくなるし、役を広げようとも思う。よく「○○組」常連の俳優などは、そのような俳優である。
④「演技のアイデアを出す」
私の今までの経験上、演技のアイデアを持って来る俳優は十人に一人ぐらいだろうと思う。たいていの俳優は監督の指示どおりに演技すればいいと思っている。それもある意味間違いではないが、そういう俳優はあまり伸びて行かないし売れて行かない。
自分の演技は自分が考える。それを監督に提案するのがプロの俳優である。
だいぶ前になるが、まだ売れていなかったAという俳優が自分の出る所の脚本を書き変えて私に提案してきたことがあった。私はその書き変えられた脚本を読んで面白いと思ってOKした。そのシーンは役の性格と立場が非常に良く伝わったその映画の中で名シーンになった。その後、Aという俳優は売れっ子になって今では主演を張っている。
アイデアを考えられる俳優こそ、一流の俳優と言える。監督たちはそういう俳優を求めている。
⑤「プロの俳優としての意識を持つ」
どんな小さな役でもキャスティングされた以上プロの仕事であると考えて行動するべきである。俳優はギャラが安いからと言ってセリフを少なくしたり出番を削ったりしない職業である。ギャラが安い分セリフを増やして欲しいという俳優がいる世界である。それは一般の職業と違う所である。前述した事と重複するがいつもプロとしての自覚をもって、コミュニケーションを大切にし、監督の演出を助け、演技のアイデアを出す俳優を監督たちは求めている。
よく「私の演技、大丈夫でしょうか?」と聞いて来る俳優がいる。私は「プロなら自信をもって演技をして下さい。私の意図と違うなら私がそのように伝えますから」と答えた。その俳優はプロとしての自覚がないのだと思った。それ以来、出演のオファーをしていない。
我々監督もプロとして、意思決定をしている。俳優もプロであって欲しい。
私が参加しているゴールデンエッグプロジェクトという俳優を世に出すために行われているプロジェクトがある。
そこには色々な監督やプロデユーサーも参加していて参加俳優たちとコミュニケーションをとりながら演技指導や映像作品を作っている。
俳優たちはこういうプロジェクトに参加して人脈を広げ、挑戦してみるのもいいかもしれない。
映画監督 香月秀之